リディアは深い溜息をつき、視線を流した。

その時、

リディアの視界の端を見覚えのある服がかすめた。

(あれは、軍の偵察服・・・。 
王宮で何度か見かけた事があるわ。

何故、あの服を着た者がこんな時間に街中にいるのかしら・・・)


「ねぇ、ケイン・・・」

言いかけた時、また別の偵察服の男が街角を走り抜けて行くのが見えた。


「ケイン、今、そこに軍の偵察服を着た者が見えたような気がするんだけど・・・」


ケインは険しい顔で車を走らせている。


「リディア様、あまり顔をお出しにならないでと言っていますよ。 

最近、軍の他国者への取り締まりが厳しくなってきていると聞いています。
おそらく、その関係ではないでしょうか。」


言いながらケインはハンドルを切り、大通りから脇道へと進路を変える。