(もう直ぐ夜が明けてしまう…)

王宮の裏庭には、夜明けを予感させる蒼い光が立ち込めていた。

王妃アーリアは、その黒いマントで顔を覆うようにして、王宮の外れにある小さな隠し扉へとその身を滑り込ませる。


ほっと息をつき、扉の鍵を閉めた時、後ろの方で、ギシッという音が響く。


「こんな時間に、どちらへお出かけだったのですか?義姉上。」


アーリアがはっとして振り向くと、そこにはフェルナンドの冷徹な眼差しがあった。


「あなたには関係ありません。私は部屋へ戻ります。」

フェルナンドは、素早く横を通り過ぎようとするアーリアの腕をすかさず掴み、ぐいと引き寄せる。


「そういう訳にはいかないのですよ。義姉上。」


「お止めなさい。フェルナンド。

あなたは言った筈です。私には指一本触れないと…!」