「わかってるわ! わかっています。

でもケイン、どうして最近そうやって大人びた物の言い方をするの?

昔は一緒に宮廷で遊んだ仲じゃない。

なのにあなただけさっさと大人になったようなふりをして…

私たち、歳だって二つしか変わらないのよ。

それなのにあなたったら・・・」


リディアは運転席に向かって口を尖らせた。


「それは・・・リディア様をお守りするのが私の務めですから・・・」

ケインは、はにかみながら答える。


「そうね。あなたは立派なナイトだわ。」


リディアは運転席の方に身を乗り出し、ケインの端整な横顔を覗き込みながら言う。


「でもケイン、今日の施設への訪問は、どうしてあんなに反対したの?

施設への訪問は私の公務でもあるのに・・・。」


その質問にケインは表情を堅くする。

近頃 ラドニアの情勢が俄かに悪化してきている。

深刻なエネルギー不足によるロジウムの供給価格の急騰、そして度重なる増税。

それは軍事予算の拡大の為とも噂され、国民の王室に対する不信や不満は募るばかりだった。

もしリディアの身に何かあったら・・・。

しかし、それはリディアに知らせるべきことではない・・・。