「ねぇ・・・それ、あなたの?」

リディアは、ユウリのジャケットの胸元に入っているハーモニカを見ながら言う。


ユウリは返事の代わりに、静かにハーモニカを取り出すと、そっと唇にあてる。


ハーモニカからゆったりとしたブルースが流れる・・・。


穏やかな音の波がリディアの胸の奥を優しく揺らす・・・。



(なんだか・・・すごく懐かしい・・・音・・・

前にどこかで・・・聞いたような・・・)


リディアはユウリの腕に体をあずけ、そっと目を閉じる。


ハーモニカの音は、静かな闇に溶けていく。

時折、潮の匂いのする風がリディアの長い髪を揺らしながら通り抜けていく。

ゆるゆると時間が過ぎていく・・・