カラスの家の離れにある古い作業場に、軽やかな笑い声が響く。


「ほんとに助かっちゃった!

ナユタのくせに機織が出来ないなんて、私くらいよ。

私、兄貴と違って機械オンチだから・・・。」

ココがパタパタと機械の埃を掃いながら言う。


白い埃は部屋一面に舞い上がり、窓から差す光に照らされて白い帯を作っていた。


「大丈夫。 慣れれば簡単よ。

でも・・・ええと・・・ あまり、使っていなかったのかしら?」

少し咳き込みながらリディアが訊ねる。


「そう。

ロトスではだいたい一家に一台織り機があるんだけど、うちみたいに全然使わない所も珍しいわね。」

ココは両手を左右に上げてみせた。


リディアはそっと機械に手のひらを滑らせる。

「ぁ・・・」

リディアの中に言いようのない懐かしさが込み上げて来る。

どうしてかしら・・・

胸が、とても熱い・・・


「どうしたの? リディアさん」

ココが首を傾げる。


「あ、ううん、なんでもないわ。」

リディアは思いを払うように首を横に振ると、慣れた手つきで糸の準備を始めた。