リディアはちょっと頬を膨らめてサリダを軽く睨むと、くすくすと笑いだした。

黒髪がサラサラと揺れる。

そして、ふと思いついたようにその口元を正した。


「あの・・・先生、ひとつお聞きしたいことがあるのですが・・・。」


「何でしょう?」


リディアは 少し躊躇ってから、碧色の目を真っ直ぐにサリダに向けて訊ねた。


「私、ずっと気になっていたんです。

何故、ナユタたちはロトス島へ行かなくてはならなかったのか。

私が今まで学んできたことは、王国の産業が発達を遂げてきた歴史だけ。

でも、このラドニアは、古くはナユタ達の国だったのでしょう?」


「リディア様、何故それを・・・」

サリダは眉をよせる。


「昔・・・ずっと昔、私がまだ小さかった頃、おじい様から聞いたことがあります。

でも、おじい様が亡くなられてからは、誰もそれを口にしなくなったわ。

どうして? どうして誰もそれを語ろうとしなくなったのかしら?」



「そ、それは・・・」