――カツ カツ カツ

大きな靴音が薄暗い宝物庫に響く。

王宮の地下の隠し扉の中にあるそこには、大理石で作られたいくつもの棚が並ぶ。

フェルナンドはその棚のひとつの前に立ち、手のひらをその扉の中央の丸い窪みに当てた。

すると、その扉は音も無く開き、中からするすると大きな引き出しが現れた。

フェルナンドはその中から、分厚い一冊の書物を取り出すと、隅に置かれた真四角の机にそれをそっと置く。

そして、机の上のランプに火を灯すと、やや湿り気を帯びた革張りの黒い椅子に腰を下ろし、引き出しから羽箒とルーペを取り出した。

書物はもう随分誰の手にも触れられていなかったらしく、うっすらと埃を被り、薄茶色の革表紙がくすんで見える。

フェルナンドは羽箒でその表面の埃をさっと掃うと表紙にある文字を確認し、薄笑みを浮かべる。

(クックックッ・・・
まさか、私の生きている間にこれを開く日が来るとはな・・・。)


その革表紙の中央には焼印でただ一文字、こう記されていた。

『 Ⅹ 』 と。