オウガが去った後、フェルナンドはテーブルの上に残されたロトス島の地図を再びじっと見下ろしている。


(セシリア湖・・・・。

精霊が眠ると言われる紺碧の湖。 

まさか、あそこにジプサムがあったとは・・・。

ナユタが聖地と崇めるはずだ。

しかし、それほどのジプサムがありながら、何故ナユタはそれを使おうとしないのだ・・・。 

何故あのような遅れた文明しか持とうとしない・・・?)


フェルナンドはナユタの辿ってきた歴史を僅かに顧みる。


(決して豊かではない国・・・ロトス共和国。

そこに住むナユタ達は、200年前このラドニアから去ったその時から、その生き方を変えようとはしなかった。

これほどまでに世界が目まぐるしく変化しているというのに、彼等はそれに対して頑なに目を瞑り続けている。

何故だ・・・。 何故、彼等はあれほどまでに無欲でいることが出来るのか・・・)


フェルナンドはテーブルの上の地図にゆっくりと親指を滑らせ、

それをぐっと握る。


(まあよい。

所詮、宝は持つべき者が持ってからこその宝。 

おそらくは、今のロトス共和国にはそれを使いこなせる人間などいないのであろう。

仮に、そんな者がいたとしたら・・・、叩き潰すまで。

セシリア湖の宝は、必ず私が・・・手に入れてみせる。)