「お止めなさい。フェルナンド。

あなたがどのような態度を取ろうとも、私のあなたに対する憎しみは消える事はありません。

あなたの兄であり、我が夫アルフレッドを殺した罪は、いずれ正しき裁きを受ける事になるでしょう。」


フェルナンドはゆっくりと頭を擡げ、口端を上げながらアーリアを見上げる。

「おっしゃっている事が理解しかねますが?」


「…。フェルナンド、あなたは何を望んでいるのです?

国民の王政への不信感はつのるばかりです。

ラドニアは、確かにあなたの政策によって大きく発展してきました。

けれど、その発展によって、失ってきたものは余りにも多い・・・。

ラドニアにこれ以上何を求めるというのです?

あなたが実の兄を殺してまで手に入れたいものは、一体何なのです?!」



フェルナンドは、ゆっくりとアーリアの隣に立つ。


「私は、兄であり国王である男の影になって、常にラドニアの発展だけを望んできました。

国の象徴として存在する兄上の手足となって、この身を捧げることが私の使命だと信じてきたのです。

けれどいつも間にか、私の中にある違う自分の存在に気付いた。」