激しい嵐が去った後、王宮はかろうじて見せ掛けの平穏を保っていた。


バルコニーに佇む王妃アーリアは、その身に起こった悲劇に体中の温もりを奪われながら、それでも尚、凛とした表情を崩してはいなかった。



「義姉上…」


「来ないでください!」

ハッとして振り返ったアーリアは仮初めの夫であるフェルナンドに向かって、蔑むような眼差しを投げる。


――クックックッ

「無理もない。

あなたにとって、私は極悪人だ。

あなたの夫に成りすましたばかりか、最愛の娘まで国外へ追いやった男・・・。」


フェルナンドは構わずカツカツとアーリアに近づいて行く。

そしてアーリアの足元に跪くとその頭を深々と垂れた。


「でもご安心ください。

私はあなたには指一本触れは致しませんよ。」