――バタンッ!


「病人はどこですか?」

ドアから白衣を着た青年が駆け込んで来た。


「おい! 誰だよ 薬師なんか呼んだの。

カラス、お前だろ!」

ユウリはカラスを睨む。


「え…あ… だってこんな時間だし… 嵐だし…」


「そうですよ。医者なんて来ませんよ。

それにロトスでは医者より薬師の方が頼りになるって事、忘れたんですか?ユウリくん。」

青年は長椅子に横たわる少女の脈を取りながら振り向かずに言った。


「肩を打たれてるんだ。かなり出血もしてる。」

ユウリは焦った声を出す。

「肩を…?」

青年は、持ってきた黒い革の鞄から小さな医療用の鋏を取り出すと、少女の着ている服の肩の辺りを切り裂く。

裂かれた布の断片からは、まだ僅かに緋色の光りがちらちらと漏れているが、青年は少し眉を寄せただけで特に気にする様子も無く、手際よく処置を続ける。