Ⅹ(クロス)

リード湾では、ユウリが最後の荷を船に積んでいるところだった。


(まだ、親父だと決まったわけじゃねェ)

ユウリは自分に言い聞かせながら、気持ちを鎮める。

強風がユウリのブロンドの髪を巻き上げる。

(チッ!なんだよ、この嵐はよ!)

叩きつけるような雨が体を打ちつける。

足元のブリッジが揺れ、持っていた荷が甲板へバラバラと散らばる。

(ったく! )

そう思いながらふと前方へ視線を向けると、湾の先の方から見覚えのある白い車が猛スピードで走り込んで来るのが見えた。


(あれは・・・ いや、まさかこんな所に・・・)



思う間もなく、車はユウリの船のすぐ近くで停まり、中から若い男が走り出て来た。


(確か、あいつは・・・ケインとかいう・・・)


「頼む!!

リディア様をお前の船に乗せてくれ!!」