Ⅹ(クロス)

(追われている・・・)

ケインはバックミラーで後方の車を確認する。

(この様子だと、近くの駅や空港にも追っ手が向かっているに違いない・・・。

一体どうしたら・・・)



その時、ケインの脳裏にナユタの若者の姿が浮かんできた。


(あの若者、確か船をルード湾の東に停めてあると言っていたな・・・)



ケインは、車のハンドルを大きく切り、その進路を東へ向けた。

(一か八かだ・・・。)



「リディア様、これから、あのナユタの若者の船がある湾へと向かいます。」


「何ですって?!」


「申し訳ありませんが、おそらく他に逃げおおせる見込みがありません。」


「でも・・・彼は・・・」