――コツコツ



扉をノックする音が聞こえ、侍女が入って来る。

「お支度は整いましたでしょうか。

そろそろ、会場の方へご案内するようにと、申し付かりましたが・・・。」


「わかったわ。」


自ら仕立てた黒の王国服に身を包んだリディアの顔に、もはや憂いは無かった。

僅かに腫れが残っているその目は真っ直ぐに前を向いている。



(王女として、お父様の娘として、恥ずかしくない姿で式に臨まなくては・・・。)



侍女に導かれて部屋を後にするリディアの後ろ姿は、王女としての気品と誇り、そして確かな決意を漂わせていた。