早く着替えないと、香川くんに会えないかも知れない。

私はものすごい速さで着替え、髪を整えると、従業員出入口を目指して走った。

ハァハァ。

まだ出て来てないよね?

私は建物の外にある小さなベンチに座って彼を待った。

「あれ?さえちゃん?」

最初に出て来たのは、熊ちゃんだった。

「オレを待っていてくれたの?」

「うっ……」

言葉に詰まる私に。

「じょ~だん。オレ、さえちゃんの気持ち分かってるから。

…でもね、最後にオレ意地悪しちゃった。香川くんにチョコ見せて自慢したんだー」

いたずらっ子のように笑う彼。

"このくらいの意地悪いいでしょー"

なんて笑いながら。

「じゃね。さえちゃん。香川くん、もうすぐ出て来るよ。頑張って。
お姉ちゃん」

熊ちゃんは、最後まで、なんちゃって弟キャラで私の気持ちを押してくれたんだね。

「ありがとう。本当にありがとう」

「ど~いたしまして」

ペロッと舌を出すと、私に手を振り去って行ったんだ。

熊ちゃん、ありがとうね。