"香川くんは彼女いるの?"

意識した途端、怖くて聞けない、この言葉。

もしも"いるよ"なんて言われちゃったら…

やっぱり怖い。
知りたいのにね。

「本当に大丈夫?
何だかいつもと違うよ。具合わるいんじゃない?」

あ!心配掛けちゃう。
だめだ。

最後の日なんだから、しっかりしなくちゃ。

「心配掛けてごめん。忙しくて疲れちゃったのかな。でもご飯食べたから、元気100倍になったよ。午後も頑張るから…」

と、続ける私に。

「ちょっと待ってて」

「うん?」

一旦消えた彼の手元には。

「はい。これあげる」

小さなチョコレートが乗ってたんだ。

「いいの?」

「うん。甘いもの食べて、午後も頑張ろうよ」

「ありがとう」

「いえ。いえ。
これ"逆チョコ"みたいでしょ」

ドキン。ドキドキ。

冗談だって分かってる。分かってるけど、うれしい。

真っ赤になった私の反応が、香川くんまで伝染して。

2人で真っ赤になっちゃったんだ。