一枚の壁














「ハンス、聞いてくれ。

僕はクリスティーナと結婚する。」




俺は余りに驚いて頭が真っ白だった。








「どういう事なんだ?」








「僕の妹のエリザはクリスティーナと同じ学校だった。
初めては妹の友達としてしか見ていなかった。

でもいつからか彼女に惹かれていたんだ。


彼女のお腹にいる子が誰の子でも、僕は愛せる。


僕はお前より彼女に安らぎと安定を与える事ができる。」









確かにフェルディナンドは弁護士になるし、俺と違ってクリスティーナに不安を与える要素はない。


俺は自分の為に数百のユダヤ人を売った男なんだから…





「そうか。
彼女を幸せにしてやってくれ。」






「ハンス!!
お前は、…

クリスティーナがどんな気持ちでいるかわからないのか?


なぜ彼女にすがりついてでも一緒にいたい、結婚したいと言わない?



ハンス、お前は彼女を愛しているのか?」











「愛している。

愛しているさ、誰よりも。」