「…あんたって、裕樹と同じ部活だよね」
不機嫌そうな顔で桐生は俺に問いかける。
裕樹っていうのは、高山、高山裕樹。
こいつがいう、裕樹は多分高山しかいない。
「俺レギュラーなんだけど?しらねえの?」
「見えない!ないない!裕樹はサッカーって超似合うけど後藤がサッカーってキモいんだけど」
ムッカー!!
何こいつ、マジでムカつく。
口一辺塞がねえとわかんねえのか!?
「お前こそ、高山は似合わねえよ」
「いいじゃん!もう別れたんだから…」
一瞬、桐生は切なそうな顔をした。
そんなに、高山のこと好きなのか?
「なあ、桐生は恋するってどんなかわかる?」
「恋は人を迷わせて、苦しめる。…でも、夢を見せてくれた」
夢?
苦しんで、迷わせて、傷ついて。
それなのに、夢をみる?
それは、もう空想。
現実じゃない。
「それが、なに?」
「いや…別に?恋、したことねえからさ」
「そりゃ、遊んでばっかだもんね。ホントの恋もできないでしょ」
「する気もねえよ」
「後藤には一生できないよ。きっと…」
そうだろうな。
愛することを知らない俺が、この先人を愛するなんて不可能だ。
「そんなのとっくに、わかってる」
桐生は、あっそ、と言ってまた空に視線を上げた。
俺もそれを追うように視線を上げてみた。
久々にみる空は、広く青かった。


