恋は遊びだ。

愛は矛盾だ。

人は皆感情に犯される。

きっと、この連鎖は終わらない。

この時の俺は、最低過ぎる男だった。


「俺な、飛鳥チャンにマジなんだよ!さっきも言ったけどさ、イチもがんばろうぜ?」

「ひつこいなあ…俺はマジにはならない」

信樹一人で頑張ってくれ。
俺は、桐生を見返すだけ、あんな大口叩けないようにしてやるだけ。

桐生は、五月蝿い女で、色気もなければ、女っ気もない。
顔は黙ってれば可愛いけど、一度喋り出せば、可愛げもなくなる。
そんな奴に俺が、好きになると思うか?


逃げているのは誰だ?

俺か?

何から?

なんのために?

…桐生から?


考えるのやめた。
うん。
やめだ。

そもそも、俺は何に悩んでいるんだ。

早く落として、早く切り捨てる。

何もかも、リセットする。


「…信樹恋ってどんな感じ?」

「すっごい楽しい!」

こいつに聞いたのが間違っていた。

そんな焦ることでもない。

大丈夫だ。


教室を見渡すと、桐生は外を眺めていた。

俺は、いつの間にか声をかけていた。

「なあ、何みてんの?」

「…空」

「楽しい?」

「あんたがいなきゃ楽しかった」


いかにも桐生は、不機嫌だった。