昔の残像が脳裏を過る。
思い返すだけで罪悪感でいっぱいになる。
決して、最後まで弱音を吐くことはなく
居なくなってしまった彼女。

そいつを、今でも思い続けている。

「…優季、天国はいいとこか?」

「…雪は降るか?」

「俺がいなくて寂しくないか?」

雪の降る道をただ見つめる。
俺は、寒いのは苦手だが、雪は好きだった。
彼女が好きだった。
彼女が、大好きな雪に俺は似ていると言ってくれたから
好きになった。
そんな、単純な理由。

「イチー今日の練習部室で筋トレだってさ」

「雪降ってるからな、さすがに練習はできねえよな」

信樹はガムを口にしながら、話した。
外は雪がちらつき、地面はかすかに雪が積もっていた。

教室から見えるグラウンドも白かった。



放課後が近づく中俺はただ、彼女のいない時間に
飽きてきていた。
いつまでたってもこの生活には慣れない。




好きだったから…





前、優季の気持ちが俺から離れた時でも
俺は忘れたことなんか一度だってなかった。
忘れたくなかった。


最後にはしたくない、永遠一人の彼女。
優季は俺の中じゃ一番だった。

「お前、あいつのこと忘れられねえんだな」

「………」

「お前なら前みたいに、いろんな彼女できるって」

俺は信樹の言葉をひたすら無視して再び雪を見つめた。
無視すんなよー、と信樹は言っていたけどその言葉すら
耳に入ってこなかった。


優季が居ない世界は意味のないただの空き地。
優季と俺だけが知る二人だけの世界はとてもきれいだった。


雪を見ると思い出す。





俺と優季の世界。