ウチに向かって歩きながら、涼しい風の吹く空を見上げる。
街灯に邪魔されながらも、空は漆黒。

昼間はあんなに青かった。

青は、赤を経て濃紺と化し、そして漆黒になる。

「アキヒロ」

呟いて、目を閉じる。
あの時焼きついた青は、まだここに残ってる。

手が届かない、指さえも触れられない遠いところで、空はどんどん変化する。

雲がかかる。
ごく僅かに。
夏には大きな入道雲が、雷も呼んでくる。
夕立をもたらすのは灰色の暗い雲。
抜けるような青さを強調する、運動会のときに見上げた白い雲。
雪を身ごもった、重く垂れ込めた雲。