また、彼の部屋に来てた。
あたしには、こうするしか彼のそばにいる方法はなくて。
気持ちを伝えてしまって、この空間を失うことはあまりに怖すぎる。

ぼんやりと、ゆっくりと、時間は過ぎていく。

水を飲もうとキッチンに立って、コップを手に取る。
蛇口をひねって、流れ出た水をコップに受ける。

僅かに差し込んだ西日を受けて、水面がきらりと光った。

それに一瞬目を奪われ、水を飲むことも忘れて水面に見入る。
水はきらきらと西日を反射して赤く光っていたけれど、そのうちに静まり返って、縁に僅かに西日をたたえるだけになる。

何の飾り気もない、まるで食堂で出されるようなガラスのコップ。
それなのに、今は光をたたえて、こんなにも輝いてる。

何で、捕まえられないの?

まだ子どもだったあたしが聞く。