隙間から見える、あの遠く向こうにいるのは誰だろう?
あの人は、決して振り向かない。

肩を軽くつかむ手を、そっと握ってひきはなす。
そして、そのままその指を噛む。

「どうしたんだよ、朱」

唇が動くのだけが見える。
何も聞こえない。
聞きたくもない。

格子の向こうにいるのは、誰?

知りたい。

でも、振り向いちゃダメ。
振り向いたら、あの人も、たちまちにこの格子の一部になってしまう。



ずっと、向こうの空にいる。





会いたい。