いつだって、空は遠くにあった。




何となくやる気の出ない、日暮れのリハーサル室。

高校生の頃から、特に理由もなく手放せないギターをチューニングする。
この、元からすすけたゴールドにペイントされたギターは、あたしの唯一の差し色だ。
衣装はもちろん、プライベートでも身に付ける色は黒。
肩までの髪も黒いまま。
アイカラーも、瞳も黒。
ただ、ギターとアクセサリーだけはゴールド。それも、少し古ぼけたような、冴えない輝きのものがいい。

「アヴリル・ラヴィーンとか好きですか?」

そんなインタビューを幾度か受けた。
だけど、アヴリルなんてあたしは知らない。

あたしは、朱(アヤ)だ。