「華、さっきから袮緒を見つめっぱなしだよ?」

「へっ?!」


ほっぺをプニッとされ、我に返った私。


やば、見つめすぎた。






私、なにかが引っかかるの。


あの表情はなに?


なんで、ヘッドフォンなんか学校でしてるの…?





「……不思議な人」

「お、興味出てきた?」


「そうゆうワケじゃ、ないよ」




興味、なのかな。



この気持ちは……。







「あれ、袮緒ってば、帰る気なのかなぁ?」


ナツメの言葉に、飛んでいた思考をネオに戻した。


そういえば、ネオの肩には鞄が掛かってるし、向かう先には玄関がある。




「…私も、帰ろっかなぁ」


初めて言ったよ、こんなこと。

今までサボったことないような人間だし、私は。




「珍しい〜。こりゃ、明日はヒョウでも降るかね」

「……アホ」


私は本気で窓の外を眺めるナツメの頭に、げんこつを落とした。


一言余計なの。
ナツメは。





「まっ、またにはいいんじゃん? 先生には言っとくし、帰ったら?」


ナツメは歯を見せながら笑っている。

ナツメから伸びる手は、時計の方を指していた。



『行くなら今』



「ありがと」


なんだかんだ言って、いい人なナツメ。



ありがとう。


そう言うと私は、走って玄関を出た。