5月10日の朝。

「リーンーッ!」

遠くで輝が大きく手を振っているのが見えた。
私は駆け足で輝の元へ向かった。

「わぁ!?」

途中の小石に躓いて、私は転びそうになった。

「危なっ!」

輝が私を支えてくれた。
…というか、半分抱締めているような?
いやいや、今はそんなこと考えている暇は無い…。

「ありがとう…」

私は立ち直し、微笑む。
その瞬間、頭に浮かんだ事がある。

”恋人が出来たら、キスってする?”

輝と一回もキスをした事はない。
でも、やっぱり恋人同士なんだし…。

「リン?」

輝の声で現実に戻ってくる。

「あ、…ねえ、輝?」
「何?」
「キ、キスって、どう思う?」

お互いの顔は赤色に染まった。

「え…あ…」

輝は戸惑ったように見えたが、
私の肩を優しく掴み、…近づく。

柔らかいものが唇に当たった。
それは、紛れも無く輝の唇だった。


それが、輝と私の、初めてのキスだった。