「リン…?」
恥ずかしかった。逃げてしまいたかった。
でも、ここで逃げてしまったら、
全てが終わりだと思ったから逃げなかった。
「いいの?俺なんかで」
「…ん、嫌だったら言わないよ」
美里は目を泳がせる。
それもそうだろう。親友と片思いの相手が、
自分の前で告白を成立させていたのだから――…
でも、今は友情より恋愛をとる。
「じゃあ、俺たち今からカレカノ?」
「…そういう、事…だよ…」
チラリと私は美里を見ると、はっ、とした。
美里が泣いていた。大きな声で喚いたりしないが、
静かにシクシクと涙を流していた。
私は美里に手を差し出した。傷つけたのは自分なのに。
「ごめん、美里…私、美里の気持ち知ってるのに…」
「何言ってるの。親友の幸せが、一番なのっ」
明るく言う美里だったが、瞳の奥には涙。
罪悪感という名のものが、激しく私の心を襲った。
美里の立場が私なら、泣いていたに違いない。
「ごめんね…」
私は優しく美里の頭を撫でた。
美里は涙を拭って、私を見て微笑む。
「私の分まで幸せになってよ?リン!」
「もちろん。約束するよ」
お互い笑いあって、軽く抱締め合った。
私たちの横で、輝が安心したように微笑んでいるのが見えた。