† 忘れ者

 俺は、病院の個室にいるみたいだ。

 手入れの行き届いた真っ白い病人用ベッドに寝かされ、
 腹筋がうまく機能せず、体を起こすこともかなわない。
 点滴のチューブと、体中にきつく巻かれた包帯……。
 誰がどう見ても「重症患者」であることは間違いはないだろう。

 窓も開いていない個室は妙に蒸し暑く、
 焦燥が俺を駆り立てる。

 俺は、なぜこんなところにいる。
 いや、それ以前に。

 究極的に引っかかる部分が一つだけ、だが致命的にあった。