言葉の先を言わない俺を、不思議に思ったのか、少し首を傾げながら見つめてくる君は可愛い。


「“なぁ…”の続きは?」

「ちゃんと聞いてるのかよ?」

「聞いてるよ?」


先を促す君に、不機嫌そうに発した俺の言葉にも、笑顔だ。


「例えば、もしも…人生の長さが決まっててさ、百年きっちりだとしたら。」

「えー…百年?」


彼女は百年に不服申し立てをした。例えばって言ってるのに、いつでも全力で生きている君らしい。

真剣に不満げに唇を尖らせている。


「まぁ、例えばだって。」
 
「で?」

「百年だとしたら…どう思う?」

「ヤダ!」


即答。


「いや、ヤダ!とかじゃなくてさ…」

「ヤダ!」


また、即答。


「じゃなくて…」

「ヤダ!」

「…」


くいぎみで、即答。

君らしいと言えば君らしいけど、恨めしい気持ちを込めた俺の視線を感じ取ったのか、その理由を語りはじめた。


「だって、私の方が誕生日早いんだもん。先に死んじゃう。」


彼女は寝転がっていた体をガバッと、勢いよく起こしてペタンと座り込んだ。

唇は尖らせたまま、俺を見下ろしている。


「は?」


彼女の言葉の真意が解らずに、眉を寄せながら、俺も向き合うように胡座をかく。

視線はぶつかったまま。