「……痛くないの?」

「もちろん痛いさ」

 それでも私に出来る事をするだけなのだよ……彼が静かに応えると、アザムはそれに目を伏せた。

「ボクね……」

「!」

 詰まらせた声に勇気を振り絞り、続きを吐き出した。

「新しいお父さんが薬を作る会社の人だって知って、お医者さんになろうと思ったの」

 目の前で多くの人々が死んでいく……そんな世界で少年は生きていた。

「だから、苦しんでる人たちを助ける人になりたいって」

「良い事だ」

「でもっ! ボクはただの道具だったんだよ。お医者になんか……」

 反発するように声を荒げ、少年の声はか細く空間に消えていく。