「条件を守れるならばね」

「解ってる。なに一つ残さないから」

 気持ちが変わられたら困るとでも言うように、肩をすくめて両手を胸の前で揺らす。

「?」

 何かの約束をしていた様子の2人に少年は首をかしげた。

 白よりも若干クリームがかった壁や薄いグレイの床は清潔に保たれていて、消毒液のような鼻につく匂いが充満している。

 青年が案内した空間は学生が集まる部屋らしく、小さな室内に設置されているテーブルやロッカーには所狭しと参考書や衣服やいかがわしい雑誌が重ねられていた。

「ああ。ごめん、研究に忙しくて……」

 青年は唖然と見つめる2人に苦笑いを浮かべた。

「ふむ……あまり良い環境とは言えんな」

「この人だれ?」

 いつまでも紹介してくれないベリルに業を煮やし、少年は口を開いた。