「……」

 近くに気配は無い……が、嫌な感じが肌にまとわりついている。

 確かに、ここから早く離れた方がよさそうだ。

「動くな」

 彼が先ほど電話したのは、馴染みの医者である。

 携帯のGPSを辿らせてこの男を回収させようというのだ。

 無表情の少年に目をやる。

 ウイルス……?

「潜伏期間は」

「今は……冬眠状態だ。あと、10日ほど」

 この男に詳しく聞きたい処だか、時間は無いようだった。嫌な感覚が大きくなってきている。

「ここにいろ」

 男に言い聞かせ、少年の手を握って駆け出した。

 とりあえず乗ってきた自分の車まで足早に向かう。

「……」

 少年に目を向けると、ムスッとした表情を崩さずについて来ていた。