「おっ、俺のことはいい……とにかく、この子を」

 傷口を見ようとする青年の手を拒否しながら発する。

「黙っていろ」

 眉をひそめて男の上着を破くと傷口をきつく縛り、バックポケットから携帯電話を取り出した。

「ケイン。座標は解ったな。頼む」

 言って電話を切り男の腹部に手を当てた。

「お前はそこにいろ」

「この子は、アザム。この子の中には……殺人ウイルスが眠っている」

「!?」

 発せられた言葉に眉間のしわが深くなる。

「あ、あなたにしか、頼れなかった。『素晴らしき傭兵』と、うたわれるあなたに……」

「もう良い、喋るな」

「逃げて下さい……っ追手が……」

 その言葉にベリルは辺りを窺った。