着いた場所はやっぱりテニスコートだった。
校門からダッシュした私たちは息切れしていて、荷物を放り投げてテニスコートに大の字で寝転がった。
「はあっはあっ・・・ゆりあ先輩、さっきの本当!?」
起き上がった翔平くんが、私の上に跨って両手を握った。
それだけで、私は嬉しくて仕方ない。
見上げた翔平くんには桃さんに渡しておいた、お花柄のバンソコウが鼻に貼ってあった。
「俺、ゆりあ先輩が好きだよ。昔からずっと・・」
「翔平くんには忘れられない人がいるんじゃないの?」
桃さんに聞いた、翔平くんの初恋の女の子。
小学生の翔平くんにも高校生になった翔平くんにも想われているその女の子に。
私はずっと嫉妬してた。
翔平くんに会えない間、ずっと。
「俺の初恋の女の子はテニススクールで出逢って、転んで怪我した俺に花柄のバンソコウを貼ってくれたんだ」
目を細めて、私を見つめる翔平くん。
翔平くんの視線に私は危うく焦がされてしまいそう。
「それって・・」
「ゆりあ先輩、でしょ?昔俺にこれを貼ってくれたのは。これ貼ってくれてなんて言ったとおもう?その子」
記憶をたどれば、確かにそのワンシーンが思い浮かんできて
「イタイのイタイのとんでいけ・・?」
「やっぱり、ゆりあ先輩だ・・・。俺の初恋は」
私の目の前にあるはずの翔平くんの顔が歪んでしまった。
「私、嫉妬してたの。翔平くんの初恋の女の子に」
「嫉妬する必要なんてないよ。俺の初恋はゆりあ先輩で、二度目の恋もゆりあ先輩なんだから」
翔平くんの言葉に、我慢していたものが溢れだしてきた。
「好きだよ、翔平くんが・・好きだよ。今井先輩は憧れだったんだって分かった。翔平くんにしかドキドキしないの。翔平くんじゃないと、私ダメみたい」


