6年目の愛してる





翔平くんに想いを告げられなかったことが、私にとっては大きな傷で。


時間が傷を癒しくれるはず、なんて思っていたのに・・。


夏休みはもう終わって、今日から新学期。


学校へと向かう足取りは重い。



「やぁ、待っていたよ?」




校門で声をかけてきたのは、今井先輩だった。




「え?私のことですか?」




満面の笑みで声をかけてきた今井先輩に、前の私だったらカッコイイだなんて思って顔を赤らめていたに違いないのに。


今ではカッコイイと思っていた今井先輩の笑顔が、とても胡散臭く感じてしまう。



「僕と、付き合わないか?君、告白してきてくれた子だよね?」

「はあ・・」

「ビリヤードのときのも君だろ?」



え、気づいたのかな?


翔平くんが可愛くしてくれた私と、告白して無残に振られた私が同一人物だって。




「おさらば、なんて言う子はめったにいないからね、分かったんだ」

「あの、わた・・」

「ああ、でも僕と付き合うなら毎日キレイにしていて欲しいかな?」



私の言葉を一つも取り合おうとせずに、話を進めていく今井先輩。


先輩が付き合いたいって思ってくれるのは、翔平くんが着飾ってくれた私のこと?


私の中身なんて、これっぽっちもみてくれてないんだ。

ちょっとイラっとしつつも、今井先輩のせいで周りの生徒から注目を浴びてしまっていて思っていることを中々言うことが出来ない。




「じゃあ、行こうか。教室まで送るよ」



今井先輩が私の腰に手をまわそうとした。



「すいません、今井先輩。この人は俺のッス!」



グイッ


声の主の元へと私は引き寄せられた。