「ほら、こうだよ?」
密着しながら教えてくれる、今井先輩。
それなのに、私の心は・・跳ねたりしない。
翔平くんが私を今井先輩の元へ送り出したことが悲しくて、ズキズキ痛むだけだ。
翔平くんを追いかけたいのに、追いかけられない。
だって、きっと・・私は翔平くんの心の中には入り込めない。
私を可愛くしてあげるって言ってくれたのは、振られた場面をみて不憫に思ったからでしょう?
私の事を、少しでも恋愛感情として気にかけてくれるわけない。
だって、そうだとしたら・・私は今、今井先輩の元になんていないもん。
「君、名前は?ぜひまた会いたいな?」
今井先輩が私の手の甲にキスを落とす。
論外だよ、なんて言ったくせに。
私がセクシーな格好をすれば会いたいって行ってくれるの?
告白した私のことなんて、憶えてないんだね。
モテモテだし、仕方ないのかもしれないけど。
「今井先輩・・・」
「なんだい?」
「可愛いって言ってください」
「可愛いよ、君は。とっても素敵だ」
こんなにカッコイイ今井先輩が私にこんなこと言ってくれるなんて、夢みたい。
って思うはずなの。
前までの私なら・・。
でも今は、その言葉に視界が霞んじゃう。


