6年目の愛してる



小学生の頃に通っていたテニススクール。


入所初日、俺はまだ三年生だった。


みんなの動きについていくのが精いっぱいで、ラリーに入ると盛大に顔面から転んでしまって。


擦りむいたところが痛いのか、


みんなの前で転んでしまったことが恥ずかしいのか、


もう何が何だか分からないけど視界が霞んでしまった。


男だから、泣かない


男なんだから、泣くな


そう自分に言い聞かせていた。



『大丈夫?まってね、これ貼ってあげる!』



幼い俺に手を差しのべてくれたのは、俺より一回りくらい身長の高いお姉さんだった。


擦りむいた鼻に貼ってくれたバンソコウはお花柄で。


おまけに鼻にちょんちょんっと触れたお姉さんは



『イタイのイタイのとんでいけー!』



なんておまじないまでしてくれちゃって。



『もう、大丈夫!ちゃんと綺麗に治るからね?』



ニコッっとスマイルに


俺は淡い恋心を抱いてしまった。


でも、次の日のテニススクールにそのお姉さんはいなくて。


次の日も、その次の日も来なかった。


俺が中学に入学してテニススクールをやめるまで結局お姉さんには会えず仕舞い。


それなのに高校生の今まで、そのお姉さん以上に俺の心を動かしてくれる人はいない。


初恋から、進まない俺の時間。


のはずだったのに・・・・