それから一時間近く、終業式をサボってゆりあ先輩とテニスをして、
疲れた俺たちはベンチに座った。
「翔平くん、みてたんでしょ!朝・・」
「え?はははっ、いや・・・別にだからってわけじゃないんですよ?!ゆりあ先輩のとこにきたのは」
「ふむ!翔平くんは優しいね!」
ゆりあ先輩が俺にデコピンをした。
「いいの!たしかに私可愛らしいタイプじゃないから。私の家ね、お母さんが小さい頃に亡くなってて片親なんだ。言い訳じゃないけど、家事と学校と部活で精一杯でね?普通の女の子みたいにオシャレとかにつかう時間なくて。それで、こんなガサツになっちゃった!あは!」
頭に手を置いてかわいらしい舌をちょぴっとだして笑うゆりあ先輩。
「やっぱり、女の子らしいって髪伸ばしたりした方がいいかな!?やっぱりこんな黒い女じゃなくて、美白の時代だよね~!今井先輩の隣にいた人、小さくてふわふわってしてて可愛かったよね~。あ、でも私背が高いからやっぱり望みなし!?あうぅ~」
コロコロと表情が変わるゆりあ先輩に、いつの間にか見とれている俺がいた。
「大丈夫だよ!ゆりあ先輩。小さくてふわふわしてるのだけが女の子らしいってことじゃないんだからさ!言ったでしょ?俺が可愛くしてあげるって」
立ち上がって、ベンチに座っているゆりあ先輩の顔を覗き込んでそう言った。
「あ、あああありがとう!!」
目があった瞬間、頬を染めたゆりあ先輩。
「ん~!やっぱ先輩元からかわいいよ?ほら!もう終業式終わっちゃうし・・このまま俺の家行こう!」
「い、家!?」
「安心して?俺の家ねーちゃんが三人いるし!先輩に手だしたりしないよ、俺」
「そんなことは決して思ってないけど、いいのかな!?」
「いいって!ほら、おいで?」
先輩の荷物を持って半ば強引に家へと連れてきてしまった。


