「課長、元気ないっすね?」
会社についても元気なんて出るわけなくて、部下である竹下に心配される始末。
「昨日と同じスーツっすね?帰らなかったんですか?」
「ちょっとな、紗絵のこと傷つけちゃいそうで。帰れなかった」
竹下は俺が信頼してる数少ない部下で。
入社当初から俺が手塩にかけて育ててきた可愛いやつ。
「そうっすか・・。今日、飲みにいきませんか?ぱーっと!」
こいつは深く追及することはせずに、元気づけようとしてくれる。
詳しく話したい内容でもないから本当に助かった。
どこにいても、なにをしていても思い浮かぶのは紗絵のことで。
紗絵のことを考えていると、俺はどうにもやりきれない気持ちになってしまう。
紗絵のことが好きで、大好きで、それなのに苦しめてしまっている自分。
そのことから逃げたくて、これ以上傷つけたくなくて
無駄に仕事に打ち込んだり、竹下に付き合って飲んだりしてなるべく遅く帰るようになってしまった。


