なんて声をかけてやればいいのか、分からなかった。 紗絵を失うことが怖くて。 紗絵が、俺の傍にいることを辛いと思っていたら? それでも手放してあげる自信がないんだ。 「会社、戻るから」 ようやく発した言葉はそれだけで。 会社に向かいながら、ひどく落ち込んだ。 紗絵を幸せにしてやれてない俺。 だから、紗絵だって俺に弱音を吐かないんだ。 俺のことみることさえ、したくないんだ。 紗絵に拒絶されることが怖くて、この日初めて朝方まで家に帰ることが出来なかった。