6年目の愛してる



なんて声をかけてやればいいのか、分からなかった。


紗絵を失うことが怖くて。


紗絵が、俺の傍にいることを辛いと思っていたら?


それでも手放してあげる自信がないんだ。



「会社、戻るから」



ようやく発した言葉はそれだけで。


会社に向かいながら、ひどく落ち込んだ。


紗絵を幸せにしてやれてない俺。


だから、紗絵だって俺に弱音を吐かないんだ。


俺のことみることさえ、したくないんだ。


紗絵に拒絶されることが怖くて、この日初めて朝方まで家に帰ることが出来なかった。