「その方がシロらしいね」
リリーがそんな事を言うから、今度は自分が口を開けてしまった。
慌ててタバコを拾ったけど、また床に焼け跡が出来た。
二個目に出来た跡は少し大きくて、もうごまかせないなって思った。
諦めて二本目のタバコに火を点け、気持ちを落ち着かせる。
「ありがと…」
「え?」
「だから、似合うって言ってくれてどうも!」
「…ううん」
ありがとう。なんて、誰にも言った事がなくて、しかも二度も言わされて照れ臭かった。
リリーの方は見れなかった。
でも、どんな顔してるかは想像出来る。
そこだけ穏やかな風が凪いだように温かくて、見るだけでじんわりと熱が帯びるような、柔らかい笑顔。
その時、俺は胸が刺されたような、そんな気がした。
細い針で皮膚を突くような、そんな感じ。
やっぱ、俺…
まさか…
そんな自問自答をしながら、暫く考え込んでリリーに言ってみた。
「あのさ…東京行かねぇ?」
「東京?」
リリーが首を傾げ、冗談でしょとでも言いたげに自分を見ている。
「そ。もうすぐ大学も休みに入るし、前にリリー言ってたじゃん。一回も東京に行った事ないって」
「そうだけど…」
それは突然思い付いた事だった。
半分はこじつけで、半分は自分とリリーの為。
この部屋から離れたら、上手く言葉に出来そうな、そんな気がした。