交点の烈~沈黙するケイタイ~

 ベリルはニヤけている男の耳にささやく。

「これから戦闘になる。行け」

 男も腕を回そうとしたが、一歩遅く立ち上がられてしまった。

 そして「わかったな」と確認するように目を向けられ、走り去るその影をしばらく見つめる。

「……俺に出来ることは何も無いんだな」

 組織をこんな形で裏切ってしまったけど、後悔は無い。

 俺は天使を助けたんだ! と、自分の世界に浸りきった。

「あ、逃げなきゃな」

 男はひとしきり浸ったあと、満足したように拳を握りしめて歩き出す。