交点の烈~沈黙するケイタイ~

「助けてくれた礼に一つ。命が惜しければ逃げるが良い」

 いちいち撃つ相手を選んでいられない。

「命を粗末にするものではない」

「そ、そうだな……うん」

 にこりと微笑んだベリルに顔を赤らめた。

 まさか、ここまで上手くいくと思っていなかったベリルは呆れて笑顔を貼り付ける。

 時々、男にセマられる事があったため

「色目が通じるかな?」という軽い気持ちで試してみたのだが……なんだか悪い気さえしてきた。

 少しくらいの礼はした方が良いだろうかと、眉をひそめながらも膝を折る。

「!?」

 しゃがみ込んだ青年に体が強ばった次の瞬間──綺麗な顔が接近してきて、腕が首に回された。

 ふわりと頬に触れる金糸のような髪となめらかな肌、そして意外と筋肉質な細い腕に天にも昇る気持ちだ。