「……」

 嫌な予感がする、とてつもなく嫌な予感が……しかし出さねば解決はなさそうだ。

 ベリルは、眉間のしわを深くして左手を差し出した。

「ああ……ベリル様」

 ベリルは途端に、ぞわり! と鳥肌を立てる。

 しつこくなでまわされている手を眺めて

「これは他人の手だ、私の手ではない」などと呪文のように自分に言い聞かせ、現実逃避で誤魔化した。

 いつまで触ってるつもりだこのやろう……殴り倒したい気持ちを抑える。

 ミコはというと、ベリルの手をほおずりしたりキスしたりとやりたい放題だ。

 数分ののち、ようやく解放された手を服で拭いてひざまづいているミコを見やった。

「用がある時はお前に命令を与える。それまでは普通の生活をしているが良い」

「解りました」

 ミコは頭を深々と下げた。それを確認し、部屋から立ち去る。

 なんとなく納得のいかないベリルではあるが、こちらは片付いた。