交点の烈~沈黙するケイタイ~

「……」

 魅力的な顔立ちの男に少し睨みを利かせ、ベリルは立ち上がる事もなく見据えた。

「今の、麻酔だと思うかい?」

「何?」

「わたしの名は柳田(やなぎだ)。それはわたしの培養した毒性の強い菌でね」

 不敵な笑みを浮かべ、男は自己紹介よろしく発した。

「!? ちょっ……ええっ!?」

 驚いたのは注射針の刺さった男だ。

「これがそのワクチン。意味が解りますよねぇ? あなたなら」

 柳田はスーツのポケットからすいと注射器を取り出して、挑戦的な目をベリルに向けた。

「……」

 ベリルはそれに軽く睨みを利かせたが、目を伏せて溜息を吐く。

 柳田はニヤリとして、反対のポケットから後ろにフサの付いた注射器を出しライフルに装てんした。