交点の烈~沈黙するケイタイ~

「……」

 男は、ベリルの行動が理解出来ない様子で手足を拘束されながら呆然と聞き入った。

 淡々と説明していたベリルは、背後からの気配にスッと体をスライドさせる。

「うっ!?」

「あ、すまん」

 注射器のようなものが縛られている男の額に刺さり、さして悪気も見られない声でそれを抜いた。

 どうせ死なないのだからとは思うのだが、痛いものは痛いし無意識に避けてしまうのだから仕方ない。

「さすが『素晴らしき傭兵』……」

 背後にいた男が感心するように発して、ライフルの銃口をベリルに向けた。

 30代半ばと思われる男は艶のある前髪をかき上げて、無表情のベリルを見下ろす。