交点の烈~沈黙するケイタイ~

 右を一瞥(いちべつ)すると、こちらをしきりに気にしている男が立っていた。

 ナユタの家から出てきたベリルを、塀の影からいぶかしげに見つめている。

「……」

 なるほどね……心の中でつぶやき、歩きながら思案した。

 身代金の要求が無い処を見ると、そういう目的で彼女を連れ去った訳ではない(すでにメールの時点でそれは確実だが)。

 監視がいるという事は、それなりの理由があっての事だろう。

 しかし……と少し眉をひそめる。

 仮に弟を拉致して彼女に何かさせる気でいるのなら、わざわざ家に監視を置くだろうか。

 監視する意味がいまひとつ解らん。