交点の烈~沈黙するケイタイ~

 数十分後──都心に近い場所でタクシーが止まる。

 ベリルは料金をカードで払い、車から降りると辺りを窺った。

「……」

 大きな道路を挟んだ向こう側で、背中を向けている人影を見つめて携帯を取り出す。

<……はい?>

 いぶかしげな女性の声が携帯のマイクから響き、目を細めた。

「もう君に私は必要ない」

<えっ!?>

「私とのやりとりは全て消せ」

<ベリルさん!? そうなんでしょっ?>

「解ったな」

<待って! どこにいるの?>

 応えずに通話を切ったその瞬間──ナユタが振り返る。

 驚く彼女にニヤリと笑い、その場を去った。