――するに決まってる。



逃げちゃ…ダメだ。



心を決めると、決心が鈍らないうちにと拳を振り下ろした。



「佐野先生!」


ドンドンッと音が鳴り響く中、あたしは佐野先生を呼んだ。



すぐに扉が開いて、びっくり顔をした佐野先生が姿を現した。


「どうした? 高村」



答えずに、佐野先生のわきの下から教官室に他には誰もいないことを確認した。


変に冷静な自分がおかしくて、笑ってしまいそうになる。



「中に入れて下さい」


そう言って教官室に入ったとたん、あたしは糸が切れたように泣き出した。



「…どうした?」


涙をぬぐうように、佐野先生の手があたしの左ほおに触れて、

その温もりに少し安心を覚えた。