「そんなことしたら、研究者が一番にやられるんじゃなかったの?」

「それは感染力の強い病原菌の場合。

食中毒菌は、空気感染しない。

だから、この程度のレベルの試験室でも扱えるんじゃないかな」

あたしは、ぞっとした。

「どうしよう」

「どうしたらいいんだろうね。

けど、細菌兵器って、あんまり実用的じゃないんだよね」

「そうなの?」

「細菌でテロとか、あんまり聞かないでしょ?

無くはないんだけど、爆発物みたいな威力はないじゃん」

「じゃあ、何なんだろう。

爆発物を手に入れるほどの、資金はない、とか」

「・・・あれだって、簡単に作れるらしいけど。

ここ、教団なんでしょ?

爆発物を使ってなんかやったんじゃあ、

信者に対して説得力がないとか。

・・・それとも、単なる趣味かなあ」

趣味って・・・

あたしは、試験台の引き出しを開けてみた。

理科室にある、長い机だ。

その中に“報告書”を見つけた。

文章の部分にさっと目を通してみる。